広告会社は変われるか 藤原 治著
電通総研社長だった著者が2006年末の退職を機に記した日本の広告会社論。電通や博報堂を中心とした日本の広告会社の成り立ちと現状を記すとともに、地上波のアナログ停波のタイミングで広告会社が直面する危機を示している。広告会社に就職・転職しようとしている人や新入社員、新聞テレビラジオ雑誌などのマスメディアの広告の未来に感心がある人にオススメ。
気まぐれコンセプトで内情をおもしろおかしく書かれている広告会社であるが、なぜあのような実態なのかが分かる。書名にもあるとおり、日本の広告会社は「広告代理店」ではない。同じような業種名に旅行代理店があるが、旅行したい人の要望を叶えるための「エージェント」であるからだ。本来、広告代理業は広告主の希望を叶えるエージェントであるが、日本の広告会社は商社の業態であるという。
広告会社は、広告スペースを作ってそれを売って収益を上げている。広告効果と報酬は連動しておらず、媒体費の15%が自動的に収益になる。どれだけスペースを占有できるかが営業の勝敗を決めるため、マスメディアやイベントをはじめとして、法規制も利用してスペースを独占する。
一方、ネット広告は、例えばGoogleアドセンスのような広告は、広告スペースが次々と増殖するため、独占することができない。ポータルサイトのバナー広告などはスペースが決まっているため、従来型の占有方針が有効に作用する。
また、テレビのネット接続やハードディスク蓄積型のプレーヤの登場で、CM枠そのものの役割が危うくなる。蓄積して後で見るようになれば、ゴールデンタイムといった時間に制約が無くなる。そもそもCMがスキップされてしまう可能性が高い。そうなればペイパービューと広告入り番組が混在するようになり、広告効果と連動しない報酬はありえない。
すでに欧米の広告会社は過去に広告主の代理業に業態変化しており、例えばトヨタといった日本の広告主が海外で広告を展開するときには海外の広告会社に発注されている。
このような現状と予測を踏まえ、著者は広告会社の生き残りのシナリオを提示する。
ひとつは海外への拡大。中国でも電通は首位の座を築きつつある。
二つめは、研究開発への投資である。今後、消費者データベースやそのデータを活かしたデータマイニングといった手法が、広告効果を左右する。この範囲では現在、Googleをはじめとしたネット企業が先行しており、これとどのように戦っていくかがポイントになるという。
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